遺言書の書き方・要件について詳しく知る・自筆証書遺言

遺言とは

 遺言は、被相続人(本人)が財産を誰に、どのように、どれだけ渡すか。最も有効に活用してもらうためにという意思表示ををするものです。また、相続をめぐる親族間で
の争いを防ぐ目的もあります。
 相続が争続にならないために、遺言は有効な手段となります。
  • 遺書は自由な形で意思表示を示すことができますが、法的な効力はありません。
  • 遺言書は法的効力を持つ書類となりますので、正しく作成する必要があります。また、遺言には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言「秘密証書遺言」があります。

遺言の種類 1自筆証書遺言

メリット

  • 手軽に作成できる
  • 費用がかからない
  • 秘密にできる

デメリット

  • 不備がある場合無効になる
  • 盗難、紛失、偽造の危険性がある
  • 見つからない場合がある
  • 意思能力をめぐる争いになる可能性がある
  • 相続開始後に、家庭裁判所による検認手続きが必要となる

要件

本文・目録
  • 全文、作成日、氏名を遺言者自身が自書し、押印する
    • 全文=本文(遺言事項を書き記した部分)
    • 作成日―「年月日」を正確に記載する(「〇年〇月吉日」は不可)
    • 氏名―ペンネームや通称でも可能という判例もあるが、戸籍通りに記載することが望ましい
    • 押印―認印でも可能。信憑性を高めるためには実印がよい。
  • 財産目録は自書でなくてもよい
    • パソコンで作成した目録、預金通帳や登記事項証明書などのコピーを添付する方法も可能
    • 目録のすべてのページ(両面コピーなどは両面)に署名・押印が必要
  • 加除、訂正はその箇所に二重線を引き、訂正のための押印をし、その場所が分かるように示し内容を付記し、署名する。
  • 複数枚にわたる場合、契印はなくてもよいがトラブルを避けるため(複数枚の書面で一通の遺言書と証明するため)、契印はしたほうが良い
    • 複数枚になったら、ホチキスで留め、つなぎ目に契印(遺言書に押印した印)をする
民法968条

(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

  • 封筒には入れなくてもよい。ただし、トラブルを避けるため封筒に入れるほうが良い
  • 表面に「遺言書」「遺言書 在中」と書く
    • 「検認」を受ける必要がある―中に遺言書が入っていると分からず、開封してしまうと制裁を受ける可能性がある
  • 裏面に署名押印、日付、検認を促す文言
    • すべて自書。遺言書と同じ日付、印
    • 「開封前に家庭裁判所で検認を受けること」「開封を禁ずる この遺言書を遺言者の死後速やかに家庭裁判所に提出して検認を受けること」
  • 封印をする
民法1004条

(遺言書の検認)

 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

民法1005条

(過料)
 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

検認

遺言書を発見した相続人は、遺言書を家庭裁判所に提出し「検認」を受けなければならない
(公正証書遺言、遺言書保管所に保管されている自筆遺言書は必要なし)
概要・必要となる理由
  • 相続人に対し遺言の存在、内容を知らせるとともに、遺言書の偽造・変造を防止するための手段
    (遺言の有効・無効を判断するものではない)
  • 検認証明書が必要となる相続手続きがある(各種名義変更、預貯金の払い戻しなど)
  • 検認をして内容を確認をしなければ、「相続放棄」「遺留分侵害請求」の判断ができない
  • 検認を受けずに開封すると制裁を受ける可能性がある(封―❷)
検認手続き
  • 検認の準備
    • 申立人を決める(検認に立ち会うことが可能な人)
    • 必要書類を集める
  • 申立人が遺言者の最後の居住地を管轄する家庭裁判所に検認の申し立てを行う
  • 裁判所から検認期日の通知が送られてくるので日程調整を行う
  • 日程が確定すると、「検認期日通知書」「出欠回答書」が送付される
  • 検認期日には、申立人等立会いのもと封のされた遺言書を開封の上、検認を行う
  • 検認済証明書の申請をする
申立人・遺言書の保管者
・遺言書を発見した相続人
申立先遺言者の最後の居住地の家庭裁判所
申立に必要な費用・遺言書1通につき収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手
申し立てに必要な書類・申立書
・遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・すでに亡くなっている子、直系尊属、兄弟姉妹、代襲者としての甥姪―その方の死亡の記載のある戸籍謄本

検認期日当日の持ち物・開封前の遺言書
・「検認期日通知書」など裁判所から送付された一式
・身分証明書
・印鑑
・収入印紙

遺言書保管制度

遺言書保管制度とは

 自筆証書遺言の紛失、偽造などを防ぎます。
  • 法務局において適正に管理・保管される
  • 保管申請時に、遺言書保管官による自筆証書遺言のチェックを受けることができる
  • 原本+画像データとして長期間管理される
    • 原本―遺言者死亡後50年間
    • 画像データ― 〃 150年間
  • 検認が不要
  • 相続開始後の相続人等による遺言書の閲覧、遺言書情報証明書の交付が可能
    • 画像データについては全国どこの法務局でも上記可能
    • 原本については、原本を保管している遺言書保管所
  • 相続人等が遺言書の閲覧、遺言書情報証明書の交付を受けた際に、その他の相続人全員に関係遺言書保管通知が届く
  • 遺言者が通知対象と指定した人に対し、遺言者の死亡の事実が確認できた時、指定者通知が届く
遺言者の方ができること
  • 遺言書保管所に自筆証書遺言を預ける
  • 遺言書の閲覧
  • 遺言書の返還
  • 遺言書の変更
相続人等の方ができること(相続開始後)
  • 遺言書保管事実証明書の交付請求
    • 自分を相続人、受遺者等、遺言執行者等とする遺言書が遺言書保管所に預けられているか確認する
  • 遺言書情報証明書の交付請求
    • 相続人等の方に関係する遺言書の内容の証明書の取得
  • 遺言書の閲覧請求

様式

 民法で定められた要件に要件に加え、自筆証書遺言書保管制度により求められる様式があります。
  • 用紙
    • A4サイズ
    • 文字が読みづらくなるような模様、彩色のないもの。(一般的な罫線は可)
    • 最低限、上部5㎜、下部10㎜、左20㎜、右5㎜の余白を確保する(余白が確保されていない場合、余白に1文字でもはみだしている場合は不可)
  • 片面のみに記載
    • 各ページに総ページ数の分かるページ番号を記載する(余白内) 例:1/2,2/2)
    • 複数枚でもホチキスで綴じない
    • 財産目録も同様
法務局における遺言書の保管等に関する省令 9条

(遺言書の様式)
法第四条第二項の法務省令で定める様式は、別記第一号様式によるものとする。

別記第一号様式
  • 用紙は、文字が明瞭に判読できる日本産業規格A列四番の紙とする。
  • 縦置き又は横置きかを問わず、縦書き又は横書きかを問わない。
  • 各ページにページ番号を記載すること。
  • 片面のみに記載すること。
  • 数枚にわたるときであっても、とじ合わせないこと。
  • 様式中の破線は、必要な余白を示すものであり、記載することを要しない。

記載上の留意点

  • 長期間保存のため、消えるインク等は使用せず、消えにくい筆記用具(ボールペン、万年筆など)を使用
  • 遺言者の氏名は戸籍通りの氏名(外国籍の方は公的書類の記載通り)を記載

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