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作業所の賃金が低すぎる

■ 対象

主に以下の就労系障害福祉サービス:

  • 就労継続支援A型(雇用型)
  • 就労継続支援B型(非雇用型)

根拠法:

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律

■ A型・B型の構造的比較

  • 就労継続支援A型(雇用型)
    • 特徴: 雇用契約を締結し、各都道府県の最低賃金を適用。
    • 現状: 月額平均 約8.3万円(高いが、経営依存度が大)。
    • リスク: 報酬改定による経営厳格化で、事業所閉鎖・解雇が急増。
  • 就労継続支援B型(非雇用型)
    • 特徴: 雇用契約なし。作業の対価として「工賃」を支払う。
    • 現状: 月額平均 17,031円(時給換算 200円〜300円台)。
    • リスク: 経済的自立には程遠く、内職中心の低収益モデルが固定化。

A型・B型の平均賃金・工賃の推移(月額)

厚生労働省の「工賃・賃金実績調査」によると、両者とも近年は上昇傾向にあるが、その絶対額には大きな開きがある。

年度(平成/令和)A型:平均賃金 (月額)B型:平均工賃 (月額)
平成28年度70,720円15,295円
平成30年度76,887円16,118円
令和2年度79,625円15,776円※
令和4年度83,551円17,031円

※令和2年度は新型コロナの影響でB型の工賃が一時的に減少している

物価・最低賃金との比較

  • 最低賃金の上昇率 vs A型賃金の上昇率
    • A型事業所は最低賃金を支払う義務があるため、賃金は上がるが、事業所側の「経営の苦しさ」や「短時間勤務へのシフト(=総額の抑制)」を招いている構造。
  • 物価上昇 vs B型工賃
    • 工賃の伸びが物価上昇に追いついていない場合、実質的な生活水準は低下していることを示す折れ線グラフ。

3. 構造的な課題の表

この推移グラフの横に添えると効果的な比較表です。

項目就労継続支援A型就労継続支援B型
法的性質雇用契約あり(労働者)雇用契約なし(利用者)
賃金の源泉事業収益が原則事業収益から経費を引いた残り
上昇の要因最低賃金改定による強制力生産性向上への努力義務
構造的リスク経営悪化による事業所閉鎖超低賃金での固定化

Ⅰ.平均工賃(B型)

厚生労働省統計によると、

就労継続支援B型の
平均工賃は月額約1万7千円前後(直近公表値)

時給換算では
200円~300円台程度となるケースが多い。

※地域・事業所により差あり。

■ 統計から見る「壁」と「崖」

  1. 「工賃の壁」(B型)
    • 時給換算で一般就労の1/4〜1/5程度。
    • 生産性向上が難しく、物価高騰に対して工賃が追いつかない。
  2. 「2024年の崖」(A型)
    • 経営基準(スコア制)の厳格化による淘汰。
    • 「福祉的就労」から「一般就労に近い生産性」への要求が激化。

B型事業所の工賃(名目賃金)の伸びが物価上昇率を下回る状況は、実質賃金の低下を意味し、結果として生活水準が圧迫されていることを示している。

  • 物価の推移: 消費者物価指数(CPI)が上昇すると、同じ金額で買えるモノやサービスの量が減少する。
  • 工賃の現状: B型事業所の平均工賃は緩やかに上昇傾向にありますが、急激なインフレ局面ではその伸びが追いつかず、実質的な購買力が低下する「悪い物価上昇」の状態に陥りやすくなる。
  • 生活水準への影響: 特に低所得層において、食料品や光熱費といった固定費の割合(エンゲル係数など)が高まり、生活の「ゆとり」が失われる傾向が顕著である。

Ⅱ.A型との比較

就労継続支援A型は雇用契約を結ぶため、

  • 最低賃金の適用あり
  • ただし経営悪化による事業所閉鎖が増加傾向

B型は雇用契約を結ばないため、

  • 最低賃金法の適用外
  • 工賃水準は事業収益に依存

Ⅲ.制度上の位置づけ

B型は法律上:

一般就労が困難な者への生産活動機会の提供

とされている。

つまり、

  • 「賃金保障制度」ではない
  • 「訓練・社会参加」の枠組み

そのため、

生活保障機能は制度設計上、前提とされていない。

Ⅳ.生活への影響

月額1万~2万円水準では、

  • 単独生活の維持は困難
  • 障害年金や家族扶養への依存が前提となる
  • 経済的自立は制度上想定されていない

■ 構造整理

表向き制度構造
就労支援訓練・活動中心
社会参加賃金保障ではない
工賃支給最低賃金法の対象外(B型)
自立支援他制度との併用前提

A型: 高い賃金と引き換えに、経営不振による離職リスクを常に抱える。
B型: 居場所としての安定性は高いが、経済的自立の手段としては不十分。
結論: 利用者にとって「安定」と「収入」の両立が極めて困難な構造となっている。