5.行動障害のある利用者への適切な支援
いわゆる「問題行動」について
行動障害のあり利用者が示すいわゆる「問題行動」の原因は、利用者自身の障害によるものだけでなく、支援者も含めた環境側の問題にもあるという基本的な視点を持つ必要があります。「問題行動」は「障害特性と環境要因との相互作用の結果である」と言えます。
行動障害のある人の「問題行動」に対しては、「問題行動」の背景にある「障害特性」と「環境要因」の相互作用を明らかにして、「問題行動」の予防を支援することであり、「問題行動」の背景を探るためには、日常の行動観察が重要となります。
具体的な対応
アセスメント
行動障害のある人への支援で大切なことは、「問題行動」の防止と行動改善という「問題行動」に焦点を絞った支援だけではなく、それぞれの利用者の強みや長所等、よりポジティブな面を探り出し、そこから真のニーズを発見して、その実現に向けたQOLの向上ための支援を進めることにあります。
環境の構造化
環境をわかりやすくする手法の一つに「構造化」があります。状況が分かりにくい人に対してわかりやすい場面を用意して、意味の分かる状況を作れば適切な行動化できるという「構造化」の考え方は、自閉症の人だけでなく、重度の知的障害者にも有効となります。
強度行動障害を有する人等に対する支援者の人材育成について
強度行動障害を有する人は、施設等において適切な支援を行うことにより、自傷や他害行為等の危険を伴う行動の回数が減少する等の支援の有効性も報告されており、体系的な研修が必要とされています。このため、適切な支援を行う職員の人材育成を進めることを目的として、強度行動障害を有する人等を支援する職員を養成するための研修事業を都道府県地域生活支援促進事業のメニューとして盛り込みました。
(例:千葉県)
実施主体 | 千葉県又は千葉県知事が定めるところにより指定した研修事業者 |
受講対象者 | 基礎研修 原則として、障害福祉サービス事業所等において、知的障害、精神障害のある児者を支援対象にした業務に従事している者、若しくは今後従事する予定のある者又は障害福祉サービス事業所等の連携医療機関等において治療に当たる医療従事者とする |
実践研修 基礎研修を終了した者のうち、原則として、障害福祉サービス事業所等において、知的障害、精神障害のある児者を支援対象にした業務に従事している者、若しくは今後従事する予定のある者又は障害福祉サービス事業所等の連携医療機関等において治療に当たる医療従事者とする | |
研修の内容 | 基礎研修 下記1 |
実践研修 下記2 | |
研修講師 | 基礎研修 強度行動障害を有する者の障害特性や支援技術に関する知識を有する者で、基礎研修を教授するのに適当な者とする |
実践研修 強度行動障害を有する者の障害特性や支援技術に関する知識を有し、適切な支援計画を作成することが可能なもので、実践研修を教授するのに適当な者とする | |
終了証書の交付 | (1)知事は、基礎研修修了者、実践研修修了者に対して修了証書を交付する者とする (2)指定研修事業者は、 〃 |
終了者名簿の管理 | (1)指定研修事業者は研修修了者について、修了証書番号、修了年月日、氏名、連絡先等必要事項を記載した名簿を作成し、個人情報として十分な注意を払った上で管理するとともに、作成後違いなく知事に提出する者とする。 (2)知事は、千葉県が自ら実施した研修の研修修了者について、修了証書番号、修了年月日、氏名、連絡先等必要事項を記載した名簿を作成するとともに、指定研修事業者から提出された名簿と併せて、個人情報として十分な注意を払った上で、千葉県の責任において一元的に管理する者とする。 |
実施上の留意点 | (1)研修における終了期間 基礎研修:原則として1月以内に終了することとする。ただし、地域の実情等により、やむを得ない場合については2月の範囲内で終了する者として差し支えない。 実践研修:原則として2月以内に終了することとする。ただし、地域の実情等により、やむを得ない場合については4月の範囲内で終了する者として差し支えない。 |
(2)重度訪問介護従業者養成研修行動障害支援過程は基礎研修と、行動援護従業者養成研修課程は基礎研修及び実践研修と重なる内容があることから、それぞれ合同で開催できるものであること。 | |
(3)事業実施上知りえ得た研修修了者に係る秘密の保持について、厳格に行うこと・ | |
(4)その他 ア 人権の尊重 受講者に対し、人権の尊重について理解させるように努めること。 イ 障害のある受講者への配慮 障害のある受講者に対しては、研修会場及び宿泊施設等の配慮を行うよう努めること。」 |
1 強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)カリキュラム | |||
---|---|---|---|
科目名 | 時間数 | 内容 | |
Ⅰ 講義 | 6.5 | ||
1.強度行動障害がある者の基礎的理解 | 1.5 | ①強度行動障害の理解 | 支援の基本的な考え方 |
強度行動障害の状態 | |||
行動障害が起きる理由 | |||
障害特性の理解 | |||
2.強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識 | 5 | ②研修の意義 | 行動障害と虐待防止 |
家族の気持ち/実践報告 | |||
③支援のアイデア | 障害特性に基づいた支援 | ||
④チームプレイの基本 | チームプレイの必要性 | ||
⑤実践報告 | 児童期及び成人期における支援の実際 | ||
Ⅱ 演習 | 5.5 | ||
1.基本的な情報収集と記録等の共有 | 1 | ①基本的な情報収集 | 行動を見る視点 |
2.行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解 | 3 | ②チームプレイの基本 | 支援手順書に基づく支援の体験 |
③強度行動障害の理解 | 困っていることの体験 | ||
3.行動障害の背景にある特性の理解 | 1.5 | ④特性の分析 | 特性の把握と適切な対応 |
合計 | 12 |
2 強度行動障害者支援養成研修(実践研修)カリキュラム | |||
---|---|---|---|
科目名 | 時間数 | 内容 | |
Ⅰ 講義 | 3.5 | ||
1 強度行動障害のある者へのチーム支援 | 3 | ①支援を組み立てるための基本 | 強度行動障害の支援に必要な知識 |
②組織的なアプローチ | 組織的なアプローチの重要性 | ||
2 強度行動障害と生活の組み立て | 0.5 | ③実践報告 | チームによる支援の実際 |
Ⅱ 演習 | 8.5 | ||
1 障害特性の理解とアセスメント | 3 | ①アセスメントの方法 | 具体的なアセスメントの方法 |
障害特性に基づくアセスメント | |||
2 環境調整による強度行動障害の支援 | 3 | ②手順書の作成 | アセスメントに基づく支援手順書の作成 |
3 記録に基づく支援の評価 | 1.5 | ③記録の分析と支援手順書の修正 | 記録の方法 |
記録の分析と支援手順書の修正 | |||
4 危機対応と虐待防止 | 1 | ④関係機関との連携 | 関係機関(医療機関等)との連携 |
合計 | 12 |